気が付かず「仮面高血圧」
東京都足立区の会社員、羽鳥清治さん(70)は8年ほど前、風邪で近くの医院にかかり、「血圧が高め」と言われた。
紹介された東京女子医大・東医療センター(東京都荒川区)で、家庭用血圧計を勧められた。さっそく自宅で測って驚いた。
最高血圧は約180(基準値は140未満)。「これまで健康診断などでは何も言われなかったのに、これほど高いとは」。健康に自信があった羽鳥さんは首をかしげた。
ずっと高血圧に気づかなかった理由は何か。
羽鳥さんの主治医で、同センター内科講師の渡辺尚彦(よしひこ)さん(53)(早稲田大スポーツ科学学術院客員教授)は「仮面高血圧」ではないかと指摘する。
病院で測ると、普段より血圧が低めに出る現象を指す。家庭や職場での血圧の高さを医師が見抜けないことから仮面高血圧と呼ばれる。仕事でのストレスの多い人が、病院では気持ちがほっとして起こることが多いという。白衣の医師や看護師を見ると緊張して血圧が上昇する「白衣高血圧」とは逆の現象だ。
羽鳥さんは、現在も朝4時に起きて仕事をしており、激務が影響したのかもしれない。
「血圧は繊細。心や体の状態で大きく変わる。1回の測定では診断できない」と渡辺さんは強調する。
渡辺さん自身は、携帯型の血圧測定器を24時間、身につけている。日常生活での血圧変動は激しい。通常の最高血圧は140未満だが、硬いとんかつをかんだ時には160、トイレを我慢した時は170に跳ね上がった。
測定で異常値が出ても、治療が必要な高血圧の症状なのか、状況による一時的なものなのか、見極めなくてはならない。まず深呼吸し、落ち着いてから再測定することが大切だ。
渡辺さんは、自宅で継続的に測定し、安静時の血圧を把握しておくことを勧める。仮面高血圧や白衣高血圧を見抜くことができ、高めになってきた時には早く気づくこともできる。
普段は血圧が安定していても、運動やトイレ、急激な温度差などで予想外の高さになることがある。高齢者は動脈硬化が進んでいる人も多く、脳卒中などを招きかねない。渡辺さんは、急に激しい運動をしない、冬は風呂やトイレを暖める、など注意を呼びかける。
高血圧の薬を飲んでいる羽鳥さんは朝と夜に必ず家庭用血圧計で測定し、結果をノートに書いている。最高血圧は120から150までばらつきがあるが、全体としてはうまくコントロールできているという。継続的管理で健康への自信を取り戻したようだ。
病院で測定の場合
最高血圧140以上
最低血圧90以上
家庭で測定の場合
最高血圧135以上
最低血圧85以上
(渡辺尚彦さん監修。単位はmmHg)
(2006年1月13日 読売新聞)
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